飲食店の英語対応は何から?写真付きメニューと価格の整え方
目次
この記事のまとめ
英語対応の出発点は、料理を見て選び、金額と注文方法を確かめられるメニューを整えることです。英語で話せる人を増やすことだけを、受入準備の基準にしません。
- 調査では、写真付きメニューで十分が34.2%、英語メニューで十分が25.1%でした。
- 料理名の翻訳だけでなく、内容・注文単位・料金・提供条件を写真と一組にします。
- 日本語の原稿から厨房確認、翻訳、表示、更新までの担当を決め、情報を古くしません。
「英語を話せるスタッフがいないので、外国人のお客様への対応が難しい」。その場合も、最初から会話力だけを課題にする必要はありません。注文の前に何が分からず、何を確認できれば選べるかを、メニューから点検します。
調査は、会話以外の情報整備にも目を向ける材料
COLLINSの訪日旅行者調査では、京都の英語対応ツアー参加者354名が、十分だと感じる英語対応を回答しています。Q15は一つを選ぶ設問で、「写真付きメニューで十分」が121名・34.2%、「英語メニューで十分」が89名・25.1%でした。[1]
二つを合わせると210名・59.3%です。ただし、同じ人が写真と英語の両方を必要とした割合ではありません。また、この結果は英語での案内や、個別の相談が不要だと示しているものでもありません。
別の自由回答では、具体的な改善要望がある156件のうち、英語・翻訳が47件、メニュー・写真・価格が43件に整理されています。[2]複数テーマを付けた集計であり、全354名の不満率ではないことを踏まえて、情報を補う箇所を考えます。
まず日本語で、何を案内するかを確定する
翻訳を始める前に、料理名、内容、価格、注文単位、提供時間、含まれる品を整理します。日本語でも説明が曖昧なままでは、英語にしても顧客が判断できるとは限りません。写真の料理と、実際に注文できる商品が対応しているかも確認します。
例えば「季節のおまかせ」だけでは、単品なのかコースなのか、主菜が選べるのかが分かりません。料理人が日替わりで構成することと、注文方法まで不明でよいことは別です。変わらない構成と、仕入れで変わる部分を分けて案内します。
2025年版指南書も、外国語メニューや指差しツールを、利用時の不便を減らす環境整備として位置づけています。[3]まず自店の提供実態を短く説明できる原稿を作り、その後で翻訳へ進みます。
写真・料理名・説明に、別々の役割を持たせる
写真は、見た目、盛り付け、量のイメージを伝えるために使います。料理名は、注文する対象を特定するためのものです。説明文は、写真だけでは分かりにくい主な食材、調理方法、味わい、セット内容を補います。
一枚の写真に複数の品が写っている場合は、価格に含まれる範囲を示します。追加料理や飲み物を一緒に撮影したなら、別注文であることを分かるようにしてください。写真を魅力的にすることと、提供内容を誤解させないことを両立させます。
料理に番号を付けると、発音が分からなくても指差しで注文しやすい形にできます。ただし、日本語と英語で番号がずれたり、売り切れの商品が販売中のままだったりしないように、厨房や注文システムとの対応も揃えます。
英語は、料理名を飾るより内容を具体化する
例えば、架空の焼き魚定食なら、料理名を「Grilled Fish Set」とし、「Grilled seasonal fish, rice, miso soup and a small side dish.」と内容を添える形が考えられます。これは説明の組み立て例で、実在するメニューの翻訳ではありません。
料理名の日本語やローマ字を残したい場合も、短い内容説明を組み合わせます。文化的な背景や調理のこだわりは、注文に必要な説明の後へ置きます。最初から長い物語を読まないと何を食べるか分からない構成を避けます。
主な食材を紹介する文と、アレルギーに関する情報は同じではありません。「主要食材しか書いていない説明」を、すべての原材料が分かる一覧として案内しないようにします。個別の確認が必要な事項には、担当者へ相談する方法を用意します。
料金と注文単位は、料理の近くに置く
一人分、一皿、二人用、コース全体など、掲載金額が何に対する料金かを明示します。通貨は円と分かるようにし、価格に含まれる内容と別料金の品を同じ場所で確認できるようにします。料金の案内は日本語の説明とも一致させます。
| 項目 | 記載する内容 |
|---|---|
| 料理の特定 | 写真、番号、日本語名・英語名の対応 |
| 内容の説明 | 主な食材、調理方法、セットに含まれる品 |
| 料金 | 注文単位、円表示、追加注文の扱い |
| 提供条件 | 昼・夜、対象日、数量、事前予約の必要性 |
| 確認方法 | 不明点や個別相談の担当・窓口 |
例えば「一人あたりのコース料金」を示しているなら、二人分が写る写真でも一人分の金額だと分かるようにします。写真の横とページの末尾で条件が違わないかも確認します。安さを強調するためではなく、食事を組み立てるための情報です。
翻訳後は、英語だけで注文を説明できるか試す
翻訳ツールを使う場合も、出力をそのまま掲載せず、料理の内容と意味が合うかを確認します。日本語にある否定や数量、提供期間が抜けていないかを見るためです。料理用語や食事制限に関わる重要な箇所は、必要に応じて専門知識のある人へ確認を依頼します。
試しに日本語部分を隠し、写真と英語だけで「何を、どの単位で、いくらで注文するか」を説明してみます。次に厨房や接客担当へ渡し、同じ料理を特定できるかを確認します。翻訳の自然さだけでなく、注文のやり取りに使えることが重要です。
紙のメニューとスマートフォンの表示では、文字の大きさや見つけやすさが変わります。二次元コードを使う場合も、読み込めないときの案内を用意し、料理を選ぶための最低限の情報は別の方法でも確認できるようにします。
確認時は、初めて見る人にメニューだけを渡し、料理を一つ選んでもらう方法もあります。スタッフが先回りして説明せず、どの言葉や写真で迷ったかを聞きます。翻訳の正誤をこの試行だけで判断するのではなく、注文に必要な情報を見つけられるかの確認として行います。
その際、読めなかった文字を一律に大きくするだけではなく、料理と価格が離れていないか、写真番号が重複していないかも見ます。情報を足すより、並べ方を直した方が分かりやすい場合も考えられます。
更新する仕組みまでを、英語対応に含める
料理を変更したときは、日本語のメニュー、英語、写真、予約ページを一緒に確認します。英語版だけ数か月前の価格という状態を残さないよう、原稿の基準となる情報と更新担当を決めます。
2026年版レポートは、媒体間の基本情報を揃え、鮮度を保つ運用を重視しています。[4]この方針を、言語ごとの案内にも適用します。全文を毎回作り直すのではなく、どの料理と条件が変わったかを追える形にします。
現場で繰り返し聞かれる質問も記録します。量、食べ方、追加料金、注文の組み合わせなど、メニューで説明できる内容から補います。英語の文章量を増やすより、実際の疑問が解消されたかを点検してください。
まとめ:話せるかだけでなく、選べるかを確認する
まず代表メニューを一つ選び、写真・内容・料金・条件を一組にしてください。 厨房で事実を確認し、英語にした後も注文の場面で試します。会話力だけに頼らず、お客様が自分で確かめられる情報と、必要な相談への対応を合わせて整えましょう。
参考資料・執筆上の注意
- COLLINS株式会社「インバウンド観光客の飲食店の選び方」調査。保存済み集計表『インバウンド飲食店選びアンケート_集計分析(1)』「06_Q15_英語対応」(Q15:単一回答、n=354)。調査の公開先。
- 同集計表「07_Q16_自由記述」(具体的な改善要望156件に複数テーマを付与。英語・翻訳47件、メニュー・写真・価格43件)。
- COLLINS株式会社『飲食店のマーケティング指南書2025』p.97〜98(外国語メニュー、指差しツール等の受入環境整備)。
- COLLINS株式会社『飲食店の選び方・探索行動レポート2026』p.30〜32(基本情報の一致、メニュー・価格、公式情報)。
調査対象は京都の英語対応ツアー参加者354名であり、訪日客全体を代表しません。英語メニューで十分と回答した人が、個別の相談や英語の案内を不要としたことを意味しません。メニューの構成、翻訳例、確認手順はCOLLINSの実践提案です。料理説明は原材料・アレルゲン情報の完全な一覧ではありません。
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