飲食店の競合分析は同じ業態だけでよいか?
目次
この記事のまとめ
飲食店の競合分析では、同じ業態に加えて、顧客が同じ目的を満たすために比較する選択肢を確認します。
- 先に利用シーンを決め、その場面で候補になる店やサービスを考えます。
- 最低限必要な「類似化ポイント」と、自店を選ぶ「差別化ポイント」を分けます。
- 競合の特徴をまねるのではなく、比較を踏まえて自店が届ける価値を明確にします。
競合は、顧客が置き換えられる選択肢から考える
2025年版指南書は、ポジショニングを、ターゲット顧客の頭の中で自店がどの立ち位置を取るかを明確にする作業と説明しています。「数ある選択肢の中で、なぜこの店を選ぶのか」に答えるための考え方です。[1] 同指南書は、競合が必ずしも同じ業態ではないことも指摘しています。例えばカフェの代替には、他の飲食業態だけでなく、顧客が求めるベネフィットによっては外食以外の過ごし方も含まれます。[2] ただし、すべての店や娯楽を競合に含めると、分析の範囲が広がりすぎます。「この顧客が、この目的を果たすなら何を比較するか」と場面を限定することが必要です。直接比較される同業店と、目的を置き換える広い選択肢を分けて考えます。先に利用シーンを決めると、比較相手が見えてくる
例えば、特定の料理を食べたい人なら、同じ料理を扱う店が比較対象になるでしょう。一方、久しぶりに会う人と落ち着いて話したい食事なら、料理ジャンルが異なっても、予算と席の条件が合う店が候補になるかもしれません。以下の場面は資料を実務へ置き換えた想定例です。 「週末に二人でゆっくり食事をする」という場面なら、料理、価格、空気感、食事に使える時間を比較します。「仕事の合間に食事を済ませる」という場面なら、提供内容だけでなく、その時間内に利用できるかが条件になります。 同じ自店でも、利用シーンが変われば比較される相手が変わります。競合一覧を一つ作って固定せず、主な利用シーンごとに、何が外せない条件になるかを確認しましょう。「候補に入る条件」と「選ばれる理由」を分ける
指南書は、ポジショニングの設計で、類似化ポイントと差別化ポイントの両方を重視しています。類似化ポイントは、顧客にとって最低限必要な価値。差別化ポイントは、競合と比べた自店ならではの強みです。[1] この二つを分けると、独自の料理を強く打ち出しているのに、必要な人数の席があるか分からず候補に入らない、といった課題を捉えられます。魅力が不足していることと、利用条件を確認できないことは同じではありません。| 比較の視点 | 確認すること |
|---|---|
| 候補に入る条件 | 予算、人数、場所、営業時間など、その場面で必要な条件 |
| 自店を選ぶ理由 | 代表料理、提供方法、空気感など、自店で楽しめる価値 |
| 判断材料 | 写真、メニュー、席の説明など、条件や価値を確かめる情報 |
| 実際の利用 | 予約の可否、来店方法、当日の運営が説明と一致するか |
比較表には、確認した事実と解釈を分けて記録する
競合の公開ページを見る際は、コース価格、席の人数、料理の内容など、確認できる事実を記録します。「自店よりおしゃれ」「サービスがよさそう」といった評価だけでは、どの情報からそう考えたかが曖昧になります。 写真から受ける印象は、公開情報を読んだときの解釈として残します。実際の営業を確認していなければ、静かさや接客品質を断定しません。店の説明が古い可能性もあるため、何をいつ確認したかを付けておく方法が考えられます。 2026年版レポートは、競合と並んだ際に選ばれる理由を示すため、価格・コース・量・席・利用シーンを揃える方針を示しています。比較表は他店に順位を付けるためではなく、自店の価値と必要情報の不足を確認するために使います。[3] 比較する条件も揃えます。ランチ価格とディナー価格、通常コースと期間限定プラン、二人席と貸切条件を混ぜると、違いを正しく読めません。どの日時・人数・利用条件で比べているかを明記し、同じ場面に必要な内容から確認します。 公開情報に書かれていない項目は、「対応なし」ではなく「確認できない」と記録します。情報が見つからないことと、店舗がそのサービスを提供していないことは別です。この区別は、他店の理解だけでなく、自店の情報不足を見つける際にも役立ちます。ポジショニングマップは、軸を決めることが重要
2025年版指南書では、二つの軸で自店と競合の位置を整理するポジショニングマップを紹介しています。価格、利便性、専門性、体験価値など、複数の視点から考える方法です。[2] ただし、「自店が右上に来る軸」を先に選んでも、顧客にとって意味のある差別化とは限りません。ここでは実務上の提案として、利用場面で選択が変わる条件を軸にします。例えば、料理の提供形式と、同行者との過ごし方を比べる方法が考えられます。 また、マップの空いている場所に置けば成功するわけではありません。その特徴を求める顧客がいるか、自店で継続して提供できるかを確認する必要があります。図は判断を整理する道具であり、需要や売上を証明するものではありません。COLLINSの考察:まねる項目より、守る価値を決める
競合を見ていると、人気の料理、写真の撮り方、コースの形式をすべて取り入れたくなるかもしれません。しかし、他店の特徴を足すだけでは、自店のコンセプトや運営とつながらない可能性があります。 比較後は「自店にも必要な基本条件」「すでにあるが伝えていない強み」「自店では採らないこと」を分けます。例えば、料理人との近い距離が強みなら、豪華な内装をまねる前に、その距離で何を体験できるかを写真と言葉で示す方法があります。 そして、選んだ違いが顧客の判断に関わるかを、予約前の相談や来店理由から確かめます。競合の動きに反応して毎月別の店へ変わるのではなく、自店の価値を軸に必要な改善を選ぶための分析にしてください。 自店の比較情報も、競合と同じ条件で読み直します。自分たちは知っているから伝わっているはずだと思わず、初めての顧客が公開情報だけで判断できるかを見ます。店側が強みと考えることが、文章や写真のどこにも出ていない場合は、まずその情報を補います。 実際の予約相談で「別の店と迷っている」と聞いた場合も、店名だけでなく、何の条件で迷ったかを分かる範囲で確認します。回答を求めすぎず、自然に得られた理由を記録することで、机上で置いた比較軸を見直す材料にできます。まとめ:競合分析を、選ばれる理由の確認に使う
同じ業態を見ることは必要ですが、それだけで顧客の選択肢を捉え切れるとは限りません。利用シーンを起点に比較相手を整理し、外せない条件と、自店ならではの価値を分けましょう。まず一つの場面を選び、顧客が候補を比べるときに、自店の何が伝わるかを確認してください。参考資料・執筆上の注意
- COLLINS株式会社『飲食店のマーケティング指南書2025』p.31(ポジショニング、類似化ポイントと差別化ポイント)。
- 同指南書p.32(ポジショニングマップ、競合が同業に限られないという視点)。
- COLLINS株式会社『飲食店の選び方・探索行動レポート2026』p.31(比較材料と、競合店と並んだ際に選ばれる理由)。
本文の利用場面・比較表・確認手順は、提供資料のポジショニングを実務へ置き換えたCOLLINSの提案です。実在店舗を比較評価したものではありません。マップ上の位置や情報整備によって売上が増えると実証したものではありません。
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