飲食店の商圏は半径だけで決まる?来店できる顧客の考え方
目次
この記事のまとめ
飲食店の商圏は距離だけではなく、顧客の生活圏・移動・利用する時間と、自店を訪れる目的を合わせて考えます。
- 近くに住む人だけでなく、近くで働く人や、その場所を訪れる人も分けて確認します。
- 認知しても営業時間に来られない場合があるため、来店の機会まで考えます。
- 狙う範囲を先に広げず、実際の来店理由とアクセスの分かりやすさを点検します。
店を中心に一定の距離で線を引くと、集客する範囲が決まったように感じられます。しかし、その範囲にいる人が、営業時間に店を利用できるとは限りません。商圏を考える際には、近さに加えて「その人に来店する機会があるか」という視点が必要です。
商圏は、来店して体験を受けられる範囲
2025年版指南書では、店内飲食は来店を前提とするため、物理的に集客可能なエリアである商圏の把握が必要だと説明しています。立地に加えて、顧客の居住地や勤務地によって商圏を考える枠組みです。[1]
同指南書の店舗起点の整理には、駅との関係、駐車場の有無、営業時間、空中階かどうかといった条件も含まれます。顧客との距離だけでなく、その人が実際に利用する際の条件を把握することが出発点になります。[2]
ここでは、全国の店に共通する標準半径を示すのではなく、自店の顧客が来られる範囲を考えます。住宅街、オフィス街、駅周辺といった立地の名称も材料ですが、それだけで主要顧客を決めず、現場の利用状況と照らし合わせます。
近くにいる人を、来店する場面で分ける
同じ地域にいても、住んでいる人、働いている人、買い物や用事で訪れている人では、利用できる時間や食事の目的が異なる場合があります。これは、資料の居住地・勤務地と利用シーンの考え方を、商圏の点検に置き換えた例です。
近隣で働く人を想定するなら、仕事の前後や休憩時間に利用するのかを考えます。近隣の住民なら、日常の食事なのか休日の会食なのかを考えます。別の地域から訪れる人なら、食事が目的なのか、他の予定と組み合わせるのかを確認します。
「この地域には人が多い」だけでは、何を案内するかは決まりません。自店が提供できる食事と、その地域にいる人の利用機会を組み合わせて、主要な場面を具体化していきます。
直線距離の近さと、利用のしやすさを分ける
実務上は、地図上の距離に加え、どのように店まで移動するかを確認する方法があります。最寄り駅からの道順、歩く経路、建物の入口、上階への移動などを、想定する顧客の立場で見てください。
例えば、同じ距離でも、普段使う駅からの帰り道にある店と、別の方向へ向かう店では、利用する場面が違うかもしれません。これは移動経路を考えるための仮説であり、距離ごとの来店率を示した調査結果ではありません。
また、近くまで来られても、入口が分からなければ迷いが残ります。2026年版レポートでは、住所だけでなく建物・階数、外観・入口の写真などの整備を重視しています。商圏の設定と、到着までの案内を別の作業にしないことが大切です。[3]
案内を点検する際は、地図の位置が正しいことと、初めて来る人が入口を見つけられることを分けます。建物前まで来た後にどの扉を使うかが分からなければ、到着の案内としては不足します。実際の行き方に沿って、迷う箇所だけを写真や言葉で補う方法があります。
時間の条件が合わなければ、認知しても来られない
2025年版指南書は、SNSで知った店へ来店しない要因の一つとして、商圏や利用シーンのずれを挙げています。平日の昼だけ営業する店を、平日に来られない顧客へ知らせても、来店の機会が限られるという例です。[4]
したがって、発信に反応があるのに来店が少ない場合、表現の魅力だけでなく、誰にどの時間の利用を伝えているかを点検します。「興味がない」のか「興味はあるが利用する機会がない」のかでは、見直す内容が違います。
ただし、反応した人の勤務形態や予定は、投稿の数字だけでは分かりません。来店時刻や問い合わせ内容など、確認できる情報から仮説を置きます。来店が少ないからという理由だけで、営業時間の延長や広域への発信を先に決める必要はありません。
距離・時間・目的を、一つの表で整理する
COLLINSの実践提案として、現在来店している顧客と、これから届けたい顧客について、次の項目を分けて整理します。実際に分かっている内容と、まだ確認できていない仮説を区別して記入してください。
| 視点 | 確認する内容 |
|---|---|
| 場所 | 居住地・勤務地・訪問先と、店舗との関係 |
| 移動 | 徒歩・公共交通など、想定する行き方と入口までの案内 |
| 時間 | 来られる曜日・時刻と、自店の提供時間 |
| 目的 | 日常の食事、会話、特別な機会など、その店を訪れる理由 |
| 情報 | その場面で店を探す接点と、確かめたい条件 |
例えば、近くで働く人の食事が中心でも、休日は別の使われ方をしているかもしれません。平日と休日を一つの商圏として決めつけず、利用する人と目的の違いを記録すると、見せるプランや写真の整理につなげられます。
表には、確認した根拠も一言添えます。「平日の利用が多い」は予約記録、「駅から来た」は顧客の回答、「休日に近隣住民が利用しそう」は仮説という具合です。同じ表に置いても、裏付けの強さが違うことを見えるようにします。
また、ある時間帯の来店者だけを見て、商圏全体を決めないようにします。昼の顧客について分かったことを、そのまま夜の顧客へ当てはめるのではなく、何の利用場面に関する記録かを明記します。
COLLINSの考察:広げる前に、来店理由を説明できるか
商圏を広く設定すれば、それだけで新規客が増えるわけではありません。離れた場所から来てもらう想定なら、その移動を伴っても体験したい理由を明らかにします。店の得意な料理や過ごし方が曖昧なまま、届ける範囲だけを広げないようにしましょう。
一方、近くにいるのに利用されていない場合は、遠方を狙う前に、価格・営業情報・利用条件が伝わっているかを確認します。近隣の人に店の存在が知られていることと、何をどの予算で楽しめるかが理解されていることは別です。
現場の確認では、住所を細かく集めること自体を目的にせず、「近くで働いている」「この料理を目的に来た」など、利用理由を理解できる範囲から始めます。得られた記録を、店舗全体の顧客構成と断定せず、次に確かめる仮説として扱います。
見直し後は、発信の到達範囲だけでなく、想定した曜日や時間に利用があったか、アクセスの問い合わせに変化があったかを確認します。人に知らせる範囲と、実際に訪れるための案内を一緒に整えることが、この商圏の考え方の目的です。
新しい範囲へ届けるときは、既存客が来る理由をそのまま使えるかも確認します。通勤の途中で立ち寄る理由と、休日にわざわざ訪れる理由は別に考える必要があります。同じ代表料理でも、時間や予約の説明を変えて伝える余地があります。
まとめ:来られる場所と、来る理由を重ねて考える
商圏は、店舗からの距離と、顧客の生活・移動・時間・目的を組み合わせて捉えます。まずは主な利用シーンを一つ選び、誰がどこから、どの時間に来られるかを書き出してください。円の大きさを決めるより先に、その人にとっての来店機会と、店までの案内を確認しましょう。
参考資料・執筆上の注意
- COLLINS株式会社『飲食店のマーケティング指南書2025』p.29(商圏と利用シーンによるターゲティング)。
- 同指南書p.26(立地・駐車場・営業時間・設備、居住地・勤務地)。
- COLLINS株式会社『飲食店の選び方・探索行動レポート2026』p.30・32(場所・入口・営業時間と、公式情報の整備)。
- 同2025年版指南書p.46(認知後に来店機会がない場合の、商圏・利用シーンのずれ)。
本文は、資料の商圏・利用シーンを組み合わせたCOLLINSの実践提案です。移動経路の例は仮説を検討するためのもので、標準的な商圏半径や距離別の来店率を示すものではありません。特定の広告サービスの配信仕様は扱っていません。
関連記事
COLLINS株式会社
飲食店のマーケティングに関するご相談は、COLLINS公式サイトのContactからお問い合わせください。